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2005/01/27

『航路』

航路 (上)ヴィレッジブックス
航路 (下)ヴィレッジブックス
コニー・ウィリス著、大森望訳

総合評価★★★★
SF度☆☆
ロマンス度☆☆

2002年に出版された単行本の文庫化。

総合病院に勤める認知心理学者のジョアンナと神経内科医のリチャードは、臨死体験を科学的に解明するためのプロジェクトを発足させる。しかし、臨死体験を宗教的なメッセージにしてしまおうとするエセ研究者に妨害されるは、ボランティアの被験者がそれぞれ都合を並べ立てて集まらないわで、プロジェクトは崩壊の危機。ジョアンナは、やむなく自ら被験者になるが…。

物語のほとんどは、病院内で進行する。病院の迷路のような構造、開店時間が異様に短いカフェテリア、応答しないポケベル、やたらに警備が厳しい高校など、どこにでもありそうなエピソードの積み重ねなのに、どこか現実世界と遊離したようなこっけいな印象。食べ物がどんどん出てくるリチャードのポケットなど、ちょっとコミカル過ぎて嘘くさいくらいだ。そして、リアルだが現実ではない疑似臨死体験の情景。思いがけない事件。

小説を読みなれてくると、結末がある程度見えてしまうものだけど、この本は、なかなか先が読めない。しかし、筋運びは自然でちゃんとしていて、たくさんの伏線があり、ラストシーンは、美しくもの悲しい。上下巻で約1300ページという長さを、ほとんど感じさせられなかった。

「死」は厳しいものだ。それを宗教心でごまかそうとする人も多い。しかし、作者はあくまで科学性こだわった。幻想場面はあくまで幻想で、その意味はSF的に解明される。臨死体験という、あぶないものを取り上げながら、けっして超常現象には流れず、「死」という重いテーマに取り組んだ大作だ。

航路 上(ヴィレッジブックス)
コニー・ウィリス著・大森望訳
航路 下(ヴィレッジブックス)
コニー・ウィリス著・大森望訳

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