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2009/08/18

『1Q84』

ファンタジー、SF,ミステリなどエンターテインメント小説はよく読むが、ブンガクと呼ばれるものは、学生時代以降は、ほとんど読んでいない。村上春樹も実は小説は読んだことがなくて、ランニングのことを書いたエッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること 』は、ちょっと読み始めたものの、何が言いたいのかわからない文章がえんえんと続くのにうんざりして、途中で投げ出してしまった。『1Q84』も、おそらく自分では買わなかったのだろうけれど、つれが貸してくれた。評判になっているし、ときどき聞こえてくる紹介は面白そうなので、読んでみた。

読み進めた感想としては、けっこう読みやすかったし、面白かった。話の進め方、内容とも、ファンタジー小説と同じような感じがする(ファンタジーとは「剣と魔法の世界」だと思いこんでいる人が多いようだが、それはまったくの誤解だ)。ところどころにちりばめられている冗談みたいな話やまじめな話…例えば、青豆などという名前を持ってしまうと自己紹介のときにやっかいだとか、ほとんどの人は本当のことを求めていないといった話も思い当たることがあり、自分の身に照らして考えてしまうことも多い。

ただ、読んでいるうちに、だんたん違和感が出てきた。どうもこの登場人物たちは、現実味が薄いのだ。三文小説のように、作者の力不足で矛盾していたり書き足りないといったことではないと思う。でも、なんだか違和感がある。最後まで読んでやっとわかったのだが、この小説は何らかのメッセージであり、作者が登場人物たちを配置し動かしている感じがする。

通常、コミックやエンターテインメント小説では、作者はその世界や登場人物たちを作り上げるものの、いったん作った登場人物たちは勝手に動き出し、その世界の中で生きているように思うのだ。それが、この『1Q84』では感じられず、最後まで登場人物たちは作者の計算の中で動かされているように思った。

最後の終わり方が、それを強く示している。なんだ、これは。こんな終わり方をされたら、登場人物たちは、たまらないよなあ。ただ、一部で言われているように、この話には続編があるわけではなく、ここで終わった、と私は思う。もちろん、一度ライヘンバッハの滝に飲まれたシャーロック・ホームズが、読者の要望に応えて生き返ったように、すべての物語には続きを書こうとすれば書くことはできるだろう。でも、この話は、ここで終わった。もし続きが出てくると、この本のメッセージが消えてしまうような気がする。それがどんなメッセージかは、私はおぼろげにしか把握していないのだけれども。

ちょっと悲しかったのは、青豆というのは"姓"で、彼女の"名前"が、私の覚えている限りでは一度も出てこなかったことだ。恐らく意図的に作者は書かなかったのではないだろうか。名前のない存在としての彼女が哀れだ。


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コメント

お盆に帰省した息子が上巻を置いて行ったので、読み始めたところです。自分では買ってまで読むつもりはなかったです。「ノルウェイの森」はよかったですけど。
メカさんの感想を心にとめて、読んでみます。

投稿: 花梨 | 2009/08/18 17:17

>花梨さん
「ノルウェイの森」は読んでいないけど、かなり違ったものかもしれません。

ところで、私は恋愛小説って苦手なんですが、いまは別の読み方ができそうです。

投稿: meka | 2009/08/18 20:38

私も先日上下巻読みました。
まあ最後まで面白く読めましたが、村上春樹の小説って何か読み終わってもあまり記憶に残らないんです。
私には文体が合わないのかな。
でも天吾の1歳の記憶の正体が結局わからなかったのが気になる。

投稿: まりも | 2009/08/21 22:48

>まりもさん
強く意識に残るかどうかは、好みとか、そのときの状況とかあるかもしれませんね。

天吾の1歳半の記憶の正体は、それほど重要なものではなくなったということに天吾が気づいたということで解決したのかなと私は思いました。だから、いまさら書かなくてもいいのかなと。

そういうのがたくさん残っているというのは、何となく不満は残ります。でも、正直言うと、ぜひともそれを解明して欲しいというほどには、この物語に思い入れを抱けませんでした。

投稿: meka | 2009/08/22 11:20

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