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2014/11/09

『「抗がん剤は効かない」の罪』

「抗がん剤は効かない」の罪

勝俣範之 著

ミリオンセラーになっている近藤誠医師の本への反論の書。

実は私は近藤誠医師の本は、読んでいない。一部の内容には一理あるとは聞いているが、根本となる主張が、科学的な論拠からあまりに離れてしまっていて、ばかばかしくて読む気にはならない。一般常識では信じられないようなことがあるのが科学だが、長い年月をかけて多くの研究者が積み上げてきたデータと考え方を否定するには、科学的な根拠が必要だ。

本書での勝俣医師の論拠は明確で、これまで私が学んできた科学的考え方に沿ったもので、納得できる。しかも、単に病気のことだけではなく、人の気持ちや生活の質まで考えて対処しようとする患者思いの医師の姿が浮かび上がる。

副産物かもしれないが、この本を読むと、現在の抗がん剤治療の実際がかなりわかる。がんといっても多様な種類があること、がんによって効く薬が違うこと、分子標的薬のこと、副作用のこと。実際の状況ことを知ることこそが、近藤医師の意見のおかしさに気づくことになると思う。

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『知ろうとすること。』

知ろうとすること。 (新潮文庫)

東京大学大学院理学研究科教授 早野龍五
糸井重里 共著

あの大震災と原発事故のあと、ものすごい勢いで、流言飛語が飛び交った。大変なことが起きていたのは、間違いない。ただ、真相は何かを知ろうとするよりも先に、人を脅しつけるような、ともかく被害を吹聴するような話が、マスコミやインターネットを飛び交った。その中で、ひとつひとつ事実を調べて、科学的に納得できるデータをtwitterでつぶやき続け、その延長でデータ収集や被災地支援を手がけるようになった早野先生が、経緯を振り返った記録。糸井重里さんとの対談形式で、科学知識があまりない人でも読みやすくまとめられている。

私がはっとしたのは、冒頭に語られた早野先生の体験談だ。1つは医学治療で自分がすでにかなりの放射線を浴びていたということ。もうひとつは、学生時代に核実験による日本の雨の放射能汚染を実体験していたこと。科学者としての判断力に加えて、自分の実体験をひとつのデータとして加えられたのは、大きいのではないか。私自身も、判断材料としてもともともっていた知識や経験は大きかったと思う。
 
本当のことを見極めるためには、一見わかりやすく扇動的な情報に飛びつくのではなく、さまざまなところから集めたデータをもとに総合的に判断していく必要がある。この本を読み、早野先生のデータ重視の姿勢に、あらためて学ばせていただいた。

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